富士山(標高3776m)の直下に阪神大震災(95年)に匹敵するマグニチュード(M)7級の地震を起こす活断層がある可能性が高いことが、東京大地震研究所を中心とした文部科学省の委託調査で分かった。強い揺れで斜面の土砂が大量に滑り落ちる「山体崩壊」につながる恐れもあり、東山麓の静岡県御殿場市などで大規模災害の恐れがある。
約2900年前に起きた山体崩壊と泥流の引き金だった可能性もあり、調査チームが地元自治体に説明を始めた。
富士山付近は火山灰などに覆われて「地表のずれ」が見えず、これまで活断層の調査が難しかった。地震研究所の佐藤比呂志教授らは昨年、特殊な車で地中から反射する振動を調べる方法で、深さ約10キロまでに活断層がないかを調べた。
山梨県富士吉田市から神奈川県箱根町まで約140キロのライン沿いを調査し、山頂から約20キロ東の静岡県御殿場市付近に、上下幅約1キロのずれを発見。1回だけの地震ではできないほどの大きさで、地震が何度も繰り返される活断層の可能性が高いと分析した。
北東−南西方向に伸びる長さ約30キロの逆断層で北西に傾斜しており、下端は富士山直下の深さ十数キロと推定。マグニチュード(M)7級の地震を起こすとみられ、揺れで東斜面が崩壊し、大量の土砂が雪崩のように下る「岩屑(がんせつ)雪崩」や泥流が発生する恐れがあり「甚大な被害を周辺地域に引き起こす危険性がある」と結論付けた。
富士山では約2900年前に大規模な山体崩壊と岩屑雪崩が発生した後、泥流が御殿場付近を広範囲に埋め尽くす「御殿場泥流」が起きた。その後、長年かけて「御殿場泥流」は流れ下り裾野市を抜け三島市の大宮町付近の土地を覆っている。
この断層は御殿場泥流以降に動いた形跡はほとんどなく、地震の頻度は数千年に1回程度とみられるが、切迫度などは分かっていない。佐藤教授は「山体崩壊は噴火を伴う場合は事前に分かるが、突然の地震で起きると避難する余裕がなく、防災上は厳しいシナリオになる」と話している。
この断層は活断層「神縄(かんなわ)・国府津(こうづ)−松田断層帯」の西側延長線上にある。付近は泥流の堆積層で厚く覆われ地下構造は不明だった。国が平成16年に作製した富士山のハザードマップもこの断層は想定していないため新たな防災対策を迫られそうだ。
さて、宝永大噴火は、歴史時代の富士山三大噴火の一つであり、他の二つは平安時代に発生した「延暦の大噴火」と「貞観の大噴火」である。宝永大噴火以後、2011年に至るまで富士山は噴火していない。
富士山の火山活動は3つの時代に分けられる。一番古い小御岳火山(こみたけ-)は今の富士山の場所で10万年以上前に活動していた。その次に古富士火山が8万年前頃から爆発的な噴火を繰り返して大きな山体を形成した。その後1万年前(5000年前とする説もある)から現在の新富士火山の活動に移行した。
噴火の始まる49日前の10月4日(10月28日)に推定マグニチュード8.6〜8.7と推定される宝永地震が起こっていることを歴史的に知っており、地震と噴火の最悪のシナリオも念頭に置く必要があるかも知れない。
この地震は定期的に巨大地震を起している2箇所の震源域、すなわち遠州沖を震源とする東海地震と紀伊半島沖を震源とする南海地震が同時に発生したと考えられている。地震の被害は東海道、紀伊半島、四国におよび、死者2万人以上、倒壊家屋6万戸、津波による流失家屋2万戸に達している。
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