函南町の南東端に、標高798mの玄岳が在る。山腹には伊豆スカイラインが通っている。山頂から見下ろす函南町の絶景は昔から知られるところで、今もハイカー達の撮影ポイントとなっている。
玄岳の北には標高620mには「氷ヶ池」が在り、名前の通り冬には池面に氷が張る。大正・明治には熱海温泉が発展して行き、上客泊り客の要望により飲食物を冷やす氷が旅館の必需品として求められるようになり、函南農家の冬場の出稼ぎとして氷ヶ池まで足場の悪い山道を登坂し、池面に張った氷を切り出し、菰氷荷を背負って熱海の温泉旅館まで搬送したと伝えられている。
昔の人達の胆力と脚力には脱帽である。重い荷を背負って凍てつく道無き道を箱根笹をかき分けて函南から熱海まで踏破することなど現在では考えられない話である。
上客用御馳走用冷蔵保存や咽喉の渇きを癒す氷の需要に応じて高値で売れたにせよ、それにかかる危険と労力と稼働時間の長さから仙人技としか言いようがない。 |
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